田中聡子
ウクライナ侵攻からの1年は、世界各地でウクライナへの連帯が起こり、ロシアへの非難の声が上がる1年でもあった。日本の戦時下の動員に詳しい民俗学者の重信幸彦さんは、「今まさに同じことが起きている」と感じるという。
重信さんは著書「みんなで戦争 銃後美談と動員のフォークロア」で、日中戦争期に盛んに出された銃後の美談から、人々がどのように戦争に動員されていったかを読み解いた。
その中で、銃後美談はプロパガンダや戦意発揚が目的とされた「作られた話」であるだけでなく、「追い詰められた人たちが、自発的に戦争に参加していく姿」の記録でもあることを指摘した。
働き手を戦争に取られても軍事扶助を受けずに耐える人、困っている人に手をさしのべる近所の人――。戦争によって追い詰められた個人が努力や相互扶助で克服していくという美談から、重信さんは「共感や同情、善意が、人々を戦争に前のめりにしていった」ことが分かるという。
重信さんは、ウクライナを応援し、ロシアを非難する感情が自分の中にも芽生えていることに気付いたという。「いつの間にか、先の戦争で『兵隊さんがんばって』と言った子どものように、私たちはなってしまっていないでしょうか」(田中聡子)
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しげのぶ・ゆきひこ
1959年生まれ。北九州市平和のまちミュージアム館長。著書に「みんなで戦争」「<お話>と家庭の近代」。
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル